リハビリの開始

そして手術後は、カテーテルにつながれていましたので、一人でトイレに行くことが出来ませんでした。自分で自由にトイレで用を足せない事がこれほど辛いとは思ってもいませんでした。数日後、医者はカテーテルを取り外すことに同意し、トイレを使用することを許可してくれました。看護師たちの助けを得て車いすでトイレに行き用を足せた時は最高に幸せを感じました。トイレに行くたびに助けを必要とした私は真夜中に看護スタッフを呼ぶことにためらいを感じました。それゆえ、私の最初の目標は自分自身でトイレに行くことが出来るようになることでした。このような経験から私はこれまで当然と考えていた事柄に対して感謝の思いが湧いてきました。


リハビリ、病院のスタッフと

リハビリ




開頭手術のゆえに長いこと髪を洗うことが出来ずにいました。抜糸後、髪を洗うことが許され、シャンプーし、ドライヤーで乾かしてもらった髪は非常に爽快でした。
病院では医師、看護師、セラピスト、掃除や調理を担当してくれる方々など大勢のスタッフによって素晴らしいケアが与えられました。その経験の中で気付いたことがあります。それは戦争、飢餓、エイズや他の病気で苦しんでいる人々が世界中には大勢いるにもかかわらず私が受けているようなケアが受けられないばかりか食べるものすら十分に無い状況にあると言う事です。この気付きにより私は自分がいかに恵まれた環境にあるかを理解し、日常生活の些細なことにも感謝するようになっていきました。
脳手術を受ける以前、私は非常に忙しい仕事のスケジュールをこなしていました。時には忙し過ぎてゆっくり朝ごはんを食べる時間もありませんでした。カウンセリングの領域で講演をしたり研修を担当したりして人々の幸福に貢献出来る事が私の幸せと考えていました。
そして日程表に書き込んだスケジュールをこなし、、質の高い仕事をすることによって達成感を得ていました。
そんな私が、脳手術を受けることにより以前の非常に忙しい生活が一変し、今ではベッドに横たわり最も基本的なニーズに対応することさえもままならなくなりました。ところが日がたつにつれ、のんびり休息する事、良い音楽に耳を傾ける事、時間をかけてゆっくり食事を取ることなどに幸せを感じ始めました。私が感じ始めたこれらの幸せは以前私が考えていた幸せとはかなり異なっていました。でもあまりの居心地の良さに、以前の忙しい生活には戻りたくないとさえ思うようになりました。そして私は与えられた環境の中で小さな事にも幸せを感じるようになりました。

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